チェコのガラスボタンを探す旅

バイヤーとして欧州各地を回って、4年の月日が経ちました。まだ新米ではありますが、日々素敵な何かを求めて、欧州の街へ繰り出しています。

さて、運命の出会いとは不思議なもので、いつも突然やってくるのです。

これは、フランスのとある蚤の市を回っていたときのことです。


沢山のアンティーク雑貨に囲まれた一角に、色とりどりに煌くアクセサリーを見つました。そのレトロなデザインと美しい質感に思わず見惚れていると、お店のおばちゃんが「それはチェコのガラスボタンなんだよ」と教えてくれました。

「チェコにこんな素敵なボタンがあるなんて!」

胸が高鳴るのを感じながら、夢中でその美しい工芸品について調べました。それは、きっと運命が引き起こした素敵な出会い。チェコへの想いをますます強くします。

人づてに聞いて回った結果、こんな私もちょっとだけチェコのボタンに詳しくなりました。チェコのガラス細工は、ボヘミアガラスと呼ばれ、ヴェネチアンガラスと並んで有名です。

多くの人が思い浮かべるのは、その高い透明度と繊細な彫刻で魅了する花瓶やグラスなどの工芸品かもしれません。

でも、もっと身近なガラスビーズやガラスボタンも豊富で、また違った魅力があるのです。今回は素敵なアクセサリーを作るためのガラスボタンを仕入れるため、工房を訪ねることにしました。

ボヘミアガラスの工房の多くはチェコ北部にあります。その中でもガラスボタンを探すならこの町、『ヤブロネツ・ナド・ニソウ』です。

ちょっと名前が覚えづらいですが、とにかく行きましょう、ヤブロネツへ!

念願のチェコへ降り立ったのは、寒さの厳しい2月のこと。
プラハからバスに乗り、1時間ほどでヤブロネツに到着。そこは小さな町で、プラハから来ると田舎に来たなあと感じます。

生憎のどんよりとした空、突き刺さる寒さとは反対に、心の中は熱く高揚していました。

この町にはビーズショップが数多く点在します。その圧倒的な量、種類の豊富さには驚きました。

そしてお目当てのガラスボタン工房へ。
案内してくれたのは70歳過ぎのオーナー。実際に作っている様子も見せてくれました。ガラス棒を溶かし、ひとつひとつ型を取っていく。


型を抜いたら周囲の余分な所を削り、綺麗に整える。この透明なボタンに今度は絵付けをしていく。

デザインは本当にさまざま。ガラス自体に色があるものもあれば、裏面を着色することによってガラス越しに色が透けるものもあります。
オーロラのように見る角度で色が変化する着色もあり、いくら見ていても飽きません。

各工程で担当が分かれていて、それぞれが熟練の技を持っています。それが結集してこの美しいボタンが完成するのです。

今ではどの担当もみんなご高齢の方なんだとか。案内してくれたオーナーは「老人の趣味でやってるんだよ」と笑います。

どんな素晴らしい伝統も技術も、後継ぎがいなければそこで途絶えてしまいます。私たちに何が出来るかわかりませんが、まずはたくさんの人に魅力を知ってもらうこと、それが少しでも伝統が続いていく力になればと思いました。

そんな気持ちも抱きつつ、数あるデザインの中から選んでオーダー。

そして、チェコにもっと長くいたい気持ちを抑えつつ、日本へ戻る時間がやってきました。
興奮冷めやらぬ間に、さっそくアクセサリーパーツを買い付けます。

チェコのガラスボタンにリングやピアスのパーツを付けて、欧州航路でアクセサリーとして完成させる。
そうすることで、もっと気軽に、もっと自由にガラスボタンを身に纏って欲しいと思いました。

手作りだからひとつひとつ微妙に違う。
ハンドメイドの温もり、レトロなデザイン、ガラスならではの透明感を味わってほしい。

また、蚤の市で自分だけの特別なアンティークアクセサリーに出会った時のような、そんなときめきやワクワクもお届けできれば嬉しいです。


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